エージェントへの相談と面談で、何を話し何を聞けるか

転職エージェントに登録すると、最初に面談があります。ここで何が決まるのかは、あまり具体的に語られません。

そして手前にもう1つ、迷うところがあります。転職するかどうか決めていない段階で、相談してよいのか。 「相談しただけで転職を勧められるのではないか」という不安です。

この記事では、まずその手前の問いに構造の側から答えたうえで、面談で実際に何が起きているのかと、求職者の側から打てる手を整理します。会計事務所・税理士法人・事業会社の経理、いずれを見ている場合でも構造は共通です。

決めていなくても、相談してよい

各社のサイトには「無理に転職を勧めることはありません」と書かれています。ただそれは宣言であって、守られたことの証拠ではありません。 ここは宣言ではなく、ビジネスの構造の側から説明できます。

まず事実として、決めていない段階の相談への対応は、エージェントによって分かれます。 とくに担当者に裁量がある会社では、担当者個人のスタンスに大きく依存します。

「求人だけ紹介しておくので、転職すると決めたら面談しましょう」

面談の工程を、意思が固まってからに置く形です。

「面談だけして、志向の棚卸しをしておきましょう。求人も紹介するので、希望に応じて進めるか判断しましょう」

面談を先に置き、そのうえで判断してもらう形です。

どちらが正しいという話ではありません。 ただ、後者を取る理由には構造的な裏づけがあります。

エージェントは、自分では何ひとつ決められない

エージェントは、転職が決まらないと収益になりません。 これは事実です。だから「転職させたがるのではないか」という見方が出てきます。

ところが同時に、エージェントには自分で意思決定できることが何ひとつありません。

  • 採用を決めるのは、求人企業
  • 転職するかを決めるのは、求職者本人

エージェントにできるのは、この2つのあいだに縁を結ぶことだけです。どちらの決定にも権限を持っていません。つまり「転職させる」ということが、構造上できません。 できるのは、決める材料を渡すところまでです。

この前提を理解していない担当者とは、付き合う価値がありません。 決めていない段階の相談を、意思が固まっていないという理由で軽く扱うような対応であれば、面談する必要はないと考えてよいところです。

相談で実際に何をするのか

では、決めていない段階の相談で何が進むのか。やることは棚卸しです。

何を整理するか
何をしたいかどういう状態でいたいか。そして何は避けたいのか
今できていることそのために現時点で満たせているもの、今後必要になるもの

この2つを突き合わせると、「今は動くべきでない」という結論が出ることもあります。

たとえば、一時的に評価が落ちているだけで、そこが頑張りどきである場合。あるいは逆に、調子が良く年収も高いが、それが自分の描く先につながっているかは別という場合。この2つは外から見た状態が似ていても、取るべき動きが逆になります。

整理ができると、次の一歩は自分で考えられるようになります。 ここまで進めば、相談の目的は果たされています。

「とりあえず内定を取ってから考えましょう」は悪手

決めていない段階の相談で、この助言が出てくることがあります。避けたい形です。 理由が3つあります。

  1. その状態で内定は出にくい。 志望の理由が固まっていないまま面接に臨むことになります
  2. 求人を出している企業に対して筋が通らない。 採用の工程には企業側の時間も乗っています
  3. 本人に何も残らない。 内定が出ても出なくても、判断の材料が増えていません

「動いてみれば分かる」という進め方が有効な場面もありますが、それは棚卸しを済ませたあとの話です。 順序が逆になると、動いた結果を解釈できません。

形式で変わるのは「その場で求人の紹介があるか」

面談の形式は、対面・電話・オンラインのいずれかになります。ここでいちばん変わるのは、その場で求人の紹介と説明があるかどうかです。

対面の場合は、経歴・志向・価値観を聞いたあとで、その内容に合う求人をその場で出せます。 一方、電話だと耳からの情報だけになるため、資料を一緒に見ながら判断したり説明したりということが難しくなります。

形式その場での求人紹介
対面聞き取った内容にもとづいて、その場で紹介できる
電話スカウトを送った案件について、手元の求人票を見てもらいながら補足する程度まで。それ以降の別案件の紹介は難しい

大きな流れ(聞き取り → 求人紹介 → すり合わせ)自体は変わりません。 変わるのは、そこに至るまでの進み方です。

どちらを選ぶかは、何を求めているかで決まる

  • スカウトが来た案件や、自分で見つけた案件の話だけ聞きたい → 効率を優先して電話・オンラインでよい
  • 自分の経験と志向の棚卸しから、求人とのすり合わせまで丁寧にやってほしい → 対面で時間を取る

なおオンラインでの実施可否や進め方は、エージェントによって差があります。 事前に確認しておくと、想定と違う形で始まるのを避けられます。

何を話すか——基本は隠さない

転職理由や現在の状況について、どこまで話すかを迷う場面があります。

基本は包み隠さず伝えるほうが、結果として自分に返ってきます。 ただし、企業側にどう伝わるかは、担当するキャリアコンサルタントの力量に左右される部分があります。

エージェントが企業に対して動くとき、何が起きているか

面談で話した内容は、そのままの形で企業に届くわけではありません。エージェントが企業に対して働きかける工程があり、そこは求職者から見えません。 見えないぶん、あとで驚くことになります。

工程は2つあります。書類として渡すものと、打診として確かめるものです。

推薦書という書類がある

実務では、エージェントが企業へ提出する推薦書という書類があります。転職理由などが書かれるもので、求職者本人が直接目にしないまま企業に渡ることもあります。

ここで打てる手が1つあります。「どのような情報として伝えようとしているか」を確認して、目線を合わせておくことです。

すべてを鵜呑みにして任せてしまうと、書類選考の通過率が理由の分からないまま低くなったり、面接の開始時点で企業側がネガティブな見方をしていたりすることが起こり得ます。 悪意があってそうなるわけではなく、伝え方の解釈がずれるだけで起こります。

確認するのは、書類そのものを見せてもらうという話ではありません。転職理由をどういう趣旨で伝えるつもりなのかを、言葉ですり合わせておくという程度で足ります。

同意を取らずに打診されることがある

もう1つの工程が、打診です。こちらのほうが見えません。

エージェントは、個人情報を削除して特定できない形にしたうえで、求人企業に確かめることがあります。 「こういう方はマッチしていると思いますか」「こういう方から選考希望が入ったらどう対応されますか」——求人にこちらが合いそうかを、先に確かめる工程です。

そこで人事や現場が「いいですね、会ってみたい」と反応すると、エージェントの側に既成事実が手に入ります。 「この企業があなたのような方を求めていて、実際に会いたいと言っている」と伝えられる状態です。

そしてそれを持って連絡が入ります。「一度面接だけでも受けてみませんか。先方もかなり乗り気で、具体的に日程もいただいています」

受け取った側は、すでに断りにくい状態になっています。 企業側が待っている形になっているので、断ると迷惑がかかるように感じます。

ここまでのどこにも、こちらの同意を取る工程が入っていません。 個人情報は伏せられているので、規約上の問題も起きにくい形になっています。

※分かりやすくするために工程を強めて書いていますが、この流れで選考の段階に立つことになるケースは実際にあります。

この工程には、利点もある

一方的に悪いものとして読むと、判断を誤ります。求職者側から見た利点が実際にあります。

  • 書類選考が免除され、面接から始められる——通常の応募より工程が短くなります
  • 個人情報は開示されていないので、企業側の関心と合わなかった場合に本人へのダメージがありません

「親身に動いてくれている」と受け取る求職者もいます。 その受け取り方が間違っているわけでもありません。

問題は工程そのものではなく、それを望んでいない人にも同じ工程が適用されることです。

予防策は2つ。どちらも物理的に効く

「気をつける」では防げません。打てる手が2つあります。

自分の知らないところで打診されるのが嫌なら、最初に伝える

「私の情報を使って企業に打診する場合は、事前に確認してください」と最初に言っておきます。この工程はどのエージェントでも実施されうるものなので、伝えていなければ実施される前提で考えたほうが実際的です。

転職の意向が全くないなら、書類そのものを渡さない

面接もカジュアル面談も受けたくない段階であれば、履歴書と職務経歴書を渡さないことです。そうすれば物理的に、エージェントから求人企業へ働きかけることができません。

危険信号になるフレーズ

工程とは別に、担当者の姿勢が見える場面があります。

転職の意向がない段階、あるいは初回の面談の時点で、金銭面が重要だと出ていないのに「仮に現職の年収が2倍になったとしても、転職はしないですか」と揺さぶってくる——このタイプには注意してください。意図的に揺さぶる質問を投げてくるかどうかが、見分け方になります。

ただし区別が要ります。 選考が始まったあと、条件が出る前にシミュレーションをしておく目的で金銭面をやり取りするのは、まったく別のものです。それはしっかりした意思決定をするために必要な工程です。

同じ年収の話でも、出るタイミングで意味が反転します。 「年収の話をされたら危険」という読み方にはしないでください。

面談の質を上げる、自分からの一手

面談を「聞かれることに答える場」だと捉えると、得られるものが情報提供だけで終わります。自分から1つ足せることがあります。

フィードバックをもらうことです。

会計・税務の実務についてのプロは求職者の側で、エージェントは転職活動のプロです。そのプロから見て、自分の価値観や考え方、これまでの経験がどう映ったのか。 どのあたりは筋が通っていて、どこは考え方をアップデートする余地がありそうか。ここを聞きます。

どこまで頼めるのかを、面談で確かめる

面談は、そのエージェントに何を頼めるのかを確かめる場でもあります。

サービスの対象範囲は会社ごとに違い、担当者によっても変わりえます。 書類の添削、面接の準備、条件の交渉、入社日の調整。どこまで入るかは一律ではないので、期待している範囲が含まれているかを最初に確かめておくほうが確実です。

ただし、業界としてできないことが1つある

範囲が会社ごとに違うと書きましたが、どのエージェントでも明確にできないことが1つあります。現職への退職の交渉です。

退職代行のようなサービスは別に存在しますが、エージェントがそれを行うことも、利用することもありません。 理由は2つあります。

  • 現職との関係を悪化させるリスクがある
  • 転職先の企業に対して、迷惑や風評被害が出るリスクを捨てきれない

つまりエージェント経由の転職であっても、退職の申し入れと受理は本人が行うことになります。 ここを代わってもらえる前提で進めると、内定が出たあとに詰まります。

そのうえで、必要な情報や進め方の手引きを用意しているエージェントは多くあります。 代行はできないが、進め方の相談はできる、という線です。会計事務所から事業会社へ、あるいはその逆へ移る場合、繁忙期の時期が職場によって違うため、退職を申し入れる時期の考え方は相談する価値があります。

前に伝えておくと、進み方が変わる

もう1つ、面談の前にできることがあります。事実を事実としてまとめて、可能なら事前に伝えておくことです。

たとえば、すでに転職活動を始めていて、他のエージェントや求人媒体を経由して選考が進んでいる場合。あるいは内定が出ている場合。こうした情報を隠さず、伝えたい範囲で先に共有しておきます。

そうすると、担当する側からは次のことが見えます。

  • どんな活動をしていて、どういう志向を持っているのか——受けている会社や社数から、ある程度読み取れる
  • どのくらいのスピード感で進めるべきか——他社で内定が出ているなら、それに合わせて調整できる

結果として、面談時点でのやり取りの質が1段か2段上がります。 同じ時間を使っても、話が具体的なところから始まるためです。

よくある質問

転職するか決めていなくても、面談を受けられますか

エージェントのスタンスによって分かれます。面談を先に置いて棚卸しから始める形と、意思が固まってからにする形の両方があります。前者を取る会社のほうが、構造的には理にかなっています。

相談しただけで転職を勧められませんか

構造上、エージェントに「転職させる」ことはできません。採用を決めるのは求人企業、転職を決めるのは本人で、エージェントはどちらの決定にも権限を持っていません。できるのは判断の材料を渡すところまでです。

面談は対面のほうがいいのですか

求めているものによって変わります。その場で求人を紹介してもらいながら進めたいなら対面が向きます。スカウトが来た案件や自分で見つけた案件の話だけ聞きたいのであれば、電話やオンラインで足ります。形式そのものに優劣はありません。

転職理由は、どこまで正直に話すべきですか

基本は隠さないほうが、結果として自分に返ってきます。面接で話す内容と、エージェントから企業に伝わっている内容に齟齬があると、それ自体が断られる理由になり得ます。ただし伝わり方は担当者次第の部分があるので、どういう趣旨で伝えるつもりかをすり合わせておくと安心です。

勝手に応募されることはあるのですか

応募そのものではなく、個人が特定できない形での打診が先に行われることがあります。企業が「会ってみたい」と反応した段階で連絡が来るため、受け取る側からは既成事実として見えます。防ぐには、打診の前に確認してほしいと最初に伝えるか、意向がない段階では書類を渡さないことです。

推薦書は見せてもらえるのですか

書類そのものを開示するかはエージェントによります。ただし「どういう情報として伝えるつもりか」を口頭で確認することはできます。目線合わせはそこまでで足ります。

他社の選考が進んでいることは言わないほうがいいですか

伝えたい範囲で先に共有しておくことをお勧めします。受けている会社や社数から志向が読み取れ、進めるスピード感も調整できるため、やり取りの質が上がります。

まとめ

  • 決めていなくても相談してよい。 エージェントは採用も転職も決められない立場なので、「転職させる」ことが構造上できません
  • 相談でやるのは棚卸し。 何をしたいか・何は避けたいのかと、今できていること・今後必要なことを突き合わせます。「今は動くべきでない」という結論も出ます
  • 「とりあえず内定を取ってから」は避けたい。 内定が出にくく、企業に対して筋が通らず、本人に何も残りません
  • 形式で変わるのは、その場で求人の紹介があるかどうか。 対面なら聞き取った内容にもとづいてその場で出せますが、電話だと別案件の紹介まで進むのは難しくなります
  • 流れ自体は変わらない。 聞き取り → 求人紹介 → すり合わせという大きな流れは共通で、そこに至るまでの進み方が変わります
  • 基本は隠さない。 面接で話す内容と企業に伝わっている内容に齟齬があると、それ自体が断られる理由になり得ます
  • 推薦書との目線合わせができる。 書類を見せてもらうのではなく、どういう趣旨で伝えるつもりかを言葉ですり合わせておきます
  • フィードバックを求める。 自分の経験や考えが転職活動のプロからどう映ったのかを聞ける機会は、ほかにほとんどありません
  • 事実は先に伝えておく。 他社の選考状況を共有しておくと、志向とスピード感が読み取られ、面談の質が上がります
  • 打診は同意を取らずに行われることがある。 個人情報を伏せた形で企業に確かめ、その反応が既成事実として戻ってきます
  • この工程には利点もある。 書類選考が免除され、合わなくても本人へのダメージがありません。問題は望んでいない人にも同じ工程が適用されることです
  • 予防策は書類を渡さないこと。 伝える手は相手が守るかどうかに依存しますが、書類がなければ企業への働きかけができません
  • どこまで頼めるかは会社ごとに違う。 ただし現職への退職交渉は、業界としてどこもできません。申し入れと受理は本人が行います

面談は、聞かれたことに答えるだけの場にもできますし、自分から材料を出して、判断に使える情報を持ち帰る場にもできます。 形式の選び方と、この記事で挙げた3つの一手は、どちらの職場を見ている場合でも同じように使えます。

会計事務所と事業会社の経理のどちらを見るかという、その手前の整理については会計事務所への転職で後悔しないためにでまとめています。