エージェントは会社で選ぶのか、担当者で選ぶのか
「エージェントは担当者で決まる」という言い方をよく見ます。実際に、担当者によって進み方が変わるのは事実です。
ただ、この言い方には順序の問題があります。 申し込む時点で担当者を選べるわけではないためです。
この記事では、何が会社に紐づいていて、何が担当者に紐づいているのかを分け、そのうえで会ってから担当者の何を見るのかまでを整理します。会計・税務の領域で、担当者がこちらの実務を分かっているかどうかは進み方に効いてきます。分かっていない相手だと、面談の時間が前提の説明で埋まります。
会社に紐づくもの、担当者に紐づくもの
まず、どちらに紐づくかがはっきりしているものがあります。
求人の量と、非公開で扱われる求人は、会社に紐づきます。 企業と契約するのは会社なので、担当者が変わっても扱える求人の範囲は変わりません。
つまり多くの求人を見たい、非公開の求人も扱ってほしいという要望なら、必然的に会社で選ぶことになります。 この観点だけで見れば、求人の流通量が多い分業型のほうに分が上がります。
一方で、担当者に紐づくものはアドバイスと伴走です。「担当者で選びたい」という話が出てくるとき、その裏にあるのは求人の量ではなく、いろいろと相談に乗ってほしい、一緒に進めてほしいという要望です。
何を優先するかで、選び方が変わります。
担当者は、事前に選びきれない
ただし、申し込む時点で会社の中の担当者を選びきることは、実質できません。
コンサルタントの紹介ページを公開しているエージェントもありますが、その情報だけで「この人がいい」と決まることはまずありません。 経歴と写真が並んでいても、自分の相談に対してどう応じる人かは、そこからは読み取れません。
担当者で選べるかどうかは、結果論、あるいは事後の話になります。 つまり「担当者で選びましょう」という助言は、論理として成り立ちにくいところがあります。
ただし、人から選ぶ経路がある場合は別
例外が1つあります。知人が良いエージェントとやり取りしていて、その担当者を紹介してもらえるという場合です。
- 紹介してもらえるつてがある
その場合、会社を比較すること自体がずれています。その人に会いに行けばよく、会社の型やサイズを検討する工程は要りません。
- 初めての会社・初めての人に申し込む
担当者は事前に選べないので、順序は「会社の構造で選んで申し込み、担当者は会ってから見極める」になります。
この2つは前提が違うので、同じ助言は当てはまりません。 「担当者で選べ」という話も「会社で選べ」という話も、どちらかの前提に立ったうえでの助言です。
規模が意味するのは、求人量と安心感
会社で選ぶとして、規模はどう効くのか。意味するものは2つです。
1つは求人の量です。 ここは等式で捉えられます——規模=売上の規模=扱っている求人の数。人材紹介は基本的に人手による仕事なので、効率の差はあっても、人数が多いほど売上と利益が高くなる構造です。
より多くの求人を見たいなら、規模の大きい分業型という組み合わせになります。
もう1つは安心感です。 広告を出している会社は名前が知られています。「あのタレントがCMをしているところ」「電車で広告を見たことがある」——このくらいの手がかりですが、初めて使う人にとっては効きます。
逆に言えば、求人を多く見たいという要望がないなら、規模は選択肢の根拠になりません。 残るのは安心感だけです。
なお中堅と中小のあいだに、大きな差はありません。 規模で分けて考える意味があるのは、大手とそれ以外という切り方までです。
個人で運営しているエージェントだけは、質的に別
規模の話の中で、1つだけ性質が違うものがあります。
個人で運営しているエージェントは、蓋を開けるまで分かることが少ないという構造にあります。組織としての肩書きがなく、求人企業との付き合いも外から見えにくく、完全に個人の商いとして成り立っているためです。
どんな人で、どんな求人を紹介してくれるのか、求人企業から信頼されているのかどうかが、事前には全く分かりません。
転職に慣れている人にとってはハードルが低い選択肢ですが、初めての転職・初めてのエージェント利用という段階では、ハードルは低くありません。
会社の成り立ちで、集まる求人に傾向が出る
もう1つ、会社側で見られる点があります。その会社がどこから来たかです。
人材派遣を主に手がけるグループから出てきた紹介会社の場合、企業側の窓口になるのは「現場の枠を派遣で埋めること」を考えている担当者になりやすくなります。そこから求人が集まる経路は2つあります。
- その担当者が正社員の採用を兼任している
- 隣の席、同じ島で働いている人が正社員の募集を持っていて、「そこも手伝ってほしい」と頼まれる
結果として、現場からミドル層の求人が集まりやすい構造になります。
一方、ミドルから上の層に特化した紹介専業の会社であれば、窓口が経営層や部門長になり、公開されない案件が直接降りてくる流れがあります。
ただしこれは傾向として押さえてください。 派遣を手がけるグループ出身だから上の層の案件がない、ということではありません。担当者のやり方や、窓口になっている人がどこまでの採用を担当しているかによって変わります。
公的な情報で、会社を確かめられる
ここまでは、面談や紹介のやり取りから読み取る話でした。それとは別に、外から公的に確かめられることがあります。
転職エージェントのサイトを見ると、会社概要や画面の下のほうに「13-ユ-◯◯◯◯◯◯」のような番号が書かれています。有料職業紹介事業の許可番号です。
この番号は飾りではなく、制度上の位置づけを示すものです。そして番号そのものから、いくつかのことが読み取れます。
ここから先の節は、厚生労働省の公表情報にもとづきます(本文の他の部分は運営者の実務経験にもとづく整理です)。
職業紹介とは何を指すのか
まず、制度が対象にしている行為の定義です。
厚生労働省は職業紹介を、「求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間の雇用関係の成立をあっせんすること」と説明しています。
登場するのは3者です。
- 求職者——職業紹介事業者に求職を申し込む
- 求人者——職業紹介事業者に求人を申し込む
- 職業紹介事業者——両方の申込みを受け、あっせんする
そして雇用契約そのものは、求職者と求人者のあいだで結ばれます。 職業紹介事業者は雇用契約の当事者になりません。ここが労働者派遣との構造的な違いにあたる部分です。
制度の全体像は厚生労働省「職業紹介事業制度の概要」に示されています。
有料職業紹介事業は許可制
有料職業紹介事業を行うには、許可が必要です。 届出ではなく許可制で、有効期間も定められています。
| 有効期間 | |
|---|---|
| 新規の許可 | 3年 |
| 更新後 | 5年 |
つまり許可は取りきりのものではなく、期間ごとに更新されるものです。番号を掲げている事業者は、その時点で有効な許可を持っていることになります。
許可は事業主単位
もう1つ、番号の読み方に関わる点があります。
許可は事業主単位で与えられます。 新たな事業所を設置する場合については、届出で足りるとされています。
このため、支店や拠点が複数あっても、許可番号は事業主に対して1つという形になります。拠点ごとに番号が振られているわけではありません。
許可番号は3つの部分でできている
厚生労働省の人材サービス総合サイトでは、許可・届出受理番号で事業所を検索できます。その入力欄の仕様から、番号の形式が分かります。
「2桁」-「記号」-「6桁」 の3つの部分です。同サイトは入力例として 13-ユ-000001 を示しています。
- 最初の2桁——都道府県に対応する番号
- 中央の記号——事業の種別を示す記号
- 末尾の6桁——事業主ごとの連番
検索画面では都道府県が必須入力になっており、番号の2桁部分と都道府県が対応する形で扱われています。
扱える職業には範囲がある
許可を受けていても、すべての職業を扱えるわけではありません。
有料職業紹介事業については、次の2つに就く職業以外の職業について行うことができるとされています。
- 港湾運送業務に就く職業
- 建設業務に就く職業
逆に言えば、この2つを除いた職業が有料職業紹介の対象です。会計・税務・経理の職種はこの除外に含まれないため、有料職業紹介事業の対象になります。
なお無料職業紹介事業については、取扱職業の範囲に特段の制限がありません。
許可を受けていない形もある
職業紹介には、許可制ではなく届出制で行われるものもあります。厚生労働省は、次の3つを届出制の対象として挙げています。
- 学校等が、学生生徒等を対象にして行うもの
学校が在籍者の就職を扱う場合が該当します。
- 農協、商工会議所、商工会等の特別の法律により設立された法人が、構成員等を対象にして行うもの
会員を対象とした紹介が該当します。
- 地方公共団体が、自らの施策に関する業務に附帯して行うもの
自治体の施策に付随して行われる紹介が該当します。
上記以外の無料職業紹介事業は許可制で、有効期間は5年とされています。
つまり、許可番号がないことが、そのまま制度の外にあることを意味するわけではありません。 届出制の対象である場合もあります。ただし、民間の転職エージェントが有料で職業紹介を行う場合は許可制の対象です。
人材サービス総合サイトで確認できる
許可を受けた事業所は、厚生労働省の人材サービス総合サイトで検索できます。
- 職業紹介事業と労働者派遣事業のそれぞれで、事業所を検索できる
- 検索の条件は、都道府県(必須)、許可・届出受理番号、事業主名称、事業所名称など
- 番号を入力する場合は、2桁と6桁を半角で入力する
事業者のサイトに書かれている番号を、そのまま公的なデータベースで引き当てられるという形になっています。番号は、名乗りが制度上の裏づけを持つかを確認するための手がかりになります。
会ってから見る、2つの観点
担当者が事前に選べないなら、会ってから見ることになります。見るのは2つです。
理解度は、話し方に出る
1つめの観点をもう少し具体的に見ます。これは面談の最初の数分で出ます。 長く話してみないと分からないものではありません。
判別の軸は1つです。理解を実績から語るか、肩書きやうんちくから語るか。
- 実績から語る——「この職種の方の転職を何件か担当してきて、こういう点が判断の分かれ目になっていました」。これは安心材料の提供です
- 肩書きやうんちくから語る——業界の知識や資格の話を並べる形。こちらは権威の押し付けに近くなります
同じ「詳しい」という印象を与える話し方ですが、こちらの判断に使えるものが残るかどうかが違います。
自信がない人ほど、よく喋る
求人の理解が浅い担当者ほど、最初から知っている情報をよく喋ります。 あとで質問されて答えられないのが嫌なので、先に情報を出しきろうとします。
逆に、理解が深い担当者は、質問の選択肢をこちら側に委ねます。 先に求人票を渡して「気になっている点はありますか」から入る形です。
そしていちばん決定的なのは、「分からない」と正直に言えるかどうかです。会計・税務の実務についての理解度は、求職者の側が高いのが当たり前です。その前提に立てている担当者は、その場で答えられないことを隠しません。そして論点を整理して、求人企業に確認を取りにいく動線まで作ります。
「ここがクリアになれば選考に進みたいという意志として受け取ってよいでしょうか」——こういう聞き方で、企業側に確認しやすい形に整えてくれる人です。
分かったふりの型:結論を先延ばしにする
一方で、分かったふりにも型があります。「そこは選考を進めるうえで影響しそうですか」「面接の場で確認する形でどうですか」といった返し方です。
ただしこの言い回し単体では判断できません。 正当なケースが2つあります。
- 本当に面接の場ですり合わせるほうが良い論点——現場の空気や進め方のように、担当者が答えるより本人が見たほうが早いもの
- 求人を吟味する段階では、認識しておかなくてもよい細かい話——入社後に確かめれば足りる範囲のもの
この2つを除いても、なお同じ形の返しが続くかどうか。 分かっていないことを悟られないように別の論点を被せる、というコミュニケーションには傾向として出ます。1回で判断せず、繰り返されるかを見てください。
面談の前でも測れる
登録して求人が送られてくる段階でも判別できます。軸は同じで、接点を語っているか、一方的な情報を語っているかです。
| 文面の形 | |
|---|---|
| 理解度が高い | 「あなたの経験と志向であれば、この事務所のこの点が生きてくると思います」——求職者と求人の接点を語っている |
| 理解度が低い | 「この会社は業界で有数の規模で、取引先には大手が並んでいます」——求人側の情報だけを語っている |
現れ方は2つあります。スカウトの文面そのものに書かれている場合と、メールのやり取りの中で滲み出る場合です。後者のほうが実際には多く、何往復かしたところで見えてきます。
ただし後者の型が響く場合もあります。規模の大きい組織で働きたいと思っている人にとっては、その情報が判断材料になります。 相手によって変わる、ということです。
なおスカウトへの期待値は下げておいてください。 1人ひとりの登録情報を細かく見て、志向や経験を把握したうえでスカウトを送っているエージェントは、残念ながら大半ではありません。良いものに出会えたら幸運、くらいに思っておくほうが実際に合っています。
そのうえで、面談の前に投げられる質問が1つあります。
「私の経験と、送っていただいた求人がマッチするか自信がないのですが、転職のプロから見てどのあたりがマッチの可能性がありそうとお感じですか」
返ってくる内容が、接点の話なのか求人側の情報なのかで、上の判別ができます。
専門性がぴったりでなくても、良い担当者はいる
ここは減点法にならないように押さえておきたいところです。
専門性と言っても、業界の知識・業務の知識など軸が複数あります。こちらの領域にぴったり合う経験がなくても、良い仕事をする担当者はいます。
見るべきは知識の量ではありません。自分の持っている経験の中から転用できそうなものを選び、そこから推し量ってこちらに当てにいく動きがあるかどうかです。
この動きは、会話の中で観察できます。 担当者が自分の実績と目の前の話を照合するとき、次のような軸で近さを探しています。
- 関わる相手が似ているか——顧問先の業種、あるいは社内で関わる部署の構成
- 扱う規模が似ているか——顧問先の事業規模、担当件数
- 関与の深さが似ているか——記帳だけか、申告まで担うか、経営の相談まで入るか
「直接の経験はないが、この軸では近い」と言えるかどうかです。この動きがある担当者は、知識の量が足りなくても会話が噛み合います。 逆に、この照合をしない担当者は、知らない領域の話になった瞬間に会話が止まります。
ただし、測りにいってはいけない
理解度を能動的に測るアクションは、逆効果になりえます。
分かっていないふりをする担当者の中には、謝れない人や、コミュニケーションで勝たないと気が済まない人がいます。 そこへ「この領域の専門性はないですよね」「どの程度ご存じですか」と聞いたらどうなるか。関係が悪くなるだけで、判断材料は増えません。
専門性が本当に効くのは、どんなときか
最後に条件をつけます。専門性が要るかどうかは、こちらの状況によって変わります。
- キャリアの方向を考えきれていない、迷いがあって判断の支援をしてほしい
ここで専門性が本当に効きます。会計・税務の領域でどういう選択肢があり、それぞれで何が積めるのかを踏まえた助言でなければ、判断の材料になりません。
- 受けたい会社が決まっていて、そこに応募したい
担当者の専門性には期待せず、割り切ってよい場面です。専門性が低いと思われる担当者経由でしか応募できない求人であっても、こちら側の動機と目的が明確なら進める判断ができます。
つまり、「専門性のある担当者を探す」ことが常に必要なわけではありません。 迷っている段階でこそ効いてくるものです。
よくある質問
- 担当者で選ぶことはできないのですか
申し込む時点では実質できません。コンサルタントの紹介ページを見ても、自分の相談にどう応じる人かは読み取れません。ただし知人から特定の担当者を紹介してもらえる場合は別で、そのときは会社を比較する工程自体が要りません。
- 大手のほうが良いのですか
求人を多く見たいなら大手に分があります。規模は売上の規模であり、扱っている求人の数とほぼ対応します。その要望がないなら、規模は選択肢の根拠になりません。残るのは知名度による安心感だけです。
- 個人で運営しているエージェントは避けたほうがいいですか
避けるべきという話ではありません。ただし人物も求人も、企業からの信頼の度合いも事前に分からないので、初めての転職では判断が難しくなります。転職に慣れていれば、ハードルは低い選択肢です。
- 担当者の専門性は、どう確かめればいいですか
直接尋ねるのは避けてください。求人の紹介時や面談でのやり取りを通じて掴むものです。見る軸は、理解を実績から語るか肩書きから語るか、そして接点を語るか求人側の情報だけを語るかです。
- 「分かりません」と言われたら、頼りないということですか
逆に見てよい部分です。会計・税務の実務についての理解度は求職者のほうが高いのが当たり前で、その前提に立てている担当者は分からないことを隠しません。そのうえで論点を整理し、企業に確認を取りにいく動線を作るかどうかを見てください。
- 担当者が合わないと感じたら、どうすればいいですか
担当を変えてもらうか、その会社は諦めて別のエージェントに相談してください。そのくらい割り切ってよい部分です。関係を立て直すことに時間を使う理由はありません。
まとめ
- 求人の量と非公開求人は、会社に紐づく。 企業と契約するのは会社なので、担当者では変わりません
- 担当者に紐づくのはアドバイスと伴走。 「担当者で選びたい」の裏にあるのは、求人の量ではなくこちらへの要望です
- 担当者は事前に選びきれない。 選べるかどうかは結果論なので、「担当者で選ぶ」は論理として成り立ちにくいところがあります
- ただし知人から紹介してもらえる場合は別。 そのときは会社を比較する工程自体が要りません
- 規模=売上の規模=扱っている求人の数。 求人を多く見たいという要望がなければ、規模は根拠になりません
- 個人で運営しているエージェントだけは質的に別。 事前に確かめる材料が少ないぶん、初めての転職では判断が難しくなります
- 会社の成り立ちで、集まる求人に傾向が出る。 ただし傾向であって、担当者のやり方で変わります
- 許可番号から、公的に確かめられることがある。 許可制であること、番号の構成、扱える職業の範囲、そして人材サービス総合サイトで検索できること
- 会ってから見るのは2つ。 自分の言っていることへの理解度と、気づいていない観点を先回りして出してくれるかどうか
- 理解度は、実績で語るか肩書きで語るかに出る。 そして「分からない」と言えるかが決定的です
- 専門性がぴったりでなくても良い担当者はいる。 見るのは知識の量ではなく、手持ちを転用して当てにいく動きの有無です
- 測りにいってはいけない。 直接尋ねると関係が悪くなるだけで、判断材料は増えません
- 専門性が本当に効くのは、迷っているとき。 受けたい会社が決まっているなら、割り切ってよい場面です
会社の型そのものの分類については、総合型と会計特化型で、何が変わるのかで整理しています。
