総合型と会計特化型で、何が変わるのか
会計・税務の転職を調べていると、「総合型」と「特化型」という区分が出てきます。会計に特化しているエージェントのほうが良いのか、それとも幅広く扱っている会社のほうが安心なのか。
この問いには、条件つきの答えしかありません。どちらが優れているかではなく、自分がどこまで絞れているかで価値が反転する構造になっているためです。
この記事では、まず人材紹介会社が実際にどう分かれているのかを整理し、そのうえでどちらが向くのかを考える順序を示します。
「総合型」に明確な定義はない
先に、前提を1つ崩しておきます。
「総合型」という言葉に、業界で共通した定義はありません。 何をもって総合型と言うかは会社ごとに違い、ブランディングとして名乗っているだけのケースが大半です。
一般的な用法としては、「職種・年収帯・地域・業界の縛りがなく、全般的に求人を扱う会社」を総合型と呼ぶ傾向はあります。ただしそれは傾向であって、名乗りの根拠ではありません。
分類は2つの軸で説明がつく
では、実際には何で分かれているのか。2つの軸でほぼ説明がつきます。
| 軸 | 何が違うか |
|---|---|
| ターゲットの方向と範囲 | どの切り方で事業を展開しているか。業界・年収帯・職種/業種・地域のどれで絞っているか |
| 提供形態 | 企業側と求職者側を同じ担当が見るか、分けるか(両面型/分業型) |
この2軸を掛け合わせると、会社ごとの違いがほぼ説明できます。 逆に説明がつかない場合は、その会社の戦略と組織形態が噛み合っていないことを表しています。
「業界特化型」「職種特化型」「年収帯特化型」「地域特化型」という言い方は、別の分類というより戦略そのものです。1つ目の軸をどう取ったかの結果です。
なお年収帯特化の高年収ゾーンに、分業型はほぼ存在しません。 2軸を掛けると、こうした業界構造も見えてきます。
両面型と分業型で、面談後の工程が違う
2つ目の軸について、もう少し具体的に見ます。中間のモデルは基本的に存在しません。 どちらかがベースにあって、そこから業務の区分を変えたり、ハイブリッド型という形を取ったりする形に落ち着きます。
名称を意図的に変えている場合もあります。 独自の呼び方をしていても、やっていることを見ると分業だった、という形です。呼び方ではなく、企業側と求職者側を同じ人が見るかどうかで判断してください。
まず押さえておきたい前提があります。最終的に実施する業務は、どちらも同じです。 それを分けているかどうかだけの違いです。企業から求人を預かり、求職者と面談し、両者を合わせて選考を進める——この一連の工程自体は変わりません。
そのうえで、いちばん違うのは面談のあとの求人のマッチングです。
- 分業型
求人の流通量を最大化することに、いちばんのメリットがあるモデルです。固有のアルゴリズムに則ったマッチングを半自動で行い、大きな母集団から求職者が自分で選ぶという考え方が基本にあります。
- 両面型
厳選した案件の紹介とマッチングを人力で行います。担当の目線を通したおすすめを、求職者がどう判断するかが主眼になります。
ただし両面型でもアルゴリズムを使った案件紹介はあります。完全に人力というわけではなく、そこに人の目線が加わるかどうかの比重の違いです。
収益の構造が違うので、動き方も変わる
ここは表に出てきませんが、両者の動き方を決めています。
分業型は、両面型より1件あたりの利益率が低い構造です。1人の転職に関わる人数が多いためで、その分だけ多くの転職を実現しないと成り立ちません。 逆に売上が積み上がれば利益の幅も大きくなるので、アシスタント・紹介の専門担当・面接の日程調整の専門担当といった単位まで分業を細かくできます。
売上の規模が小さいと、この細分化ができません。 企業側の担当と求職者側の担当の2つに分かれるだけになります。
規模が大きいほど分業型になりやすい
これには理由があります。採用と育成のしやすさです。
分業型なら「まず企業側の担当だけ」という形で採用・育成ができるため、業界未経験・営業未経験でも入れます。両面型は企業側と求職者側の両方を見るため、担当者に求められるものが増えます。
小規模で分業するとどうなるか
企業側担当と求職者側担当という大枠での分業は、小規模だとメリットが薄く、デメリットのほうが大きくなります。 分業の強みは流通量の最大化と規模の効果なので、そもそも規模が小さいとその強みが出ません。一方で、担当者のあいだで情報の差が生まれるぶんの手間は発生します。
ただし、業務の1つの工程を切り出す形なら、小規模でも成り立ちます。 スカウトを送る担当、面接の日程を調整する担当——こうしたプロセス単位の分業であれば、規模に関係なくメリットがあります。
「分業型かどうか」を1つの軸で見ると、この違いが見えません。 何を分けているのかまで見る必要があります。
求人の性質によって、向き不向きが変わる
求人ごとに「この求人はこの型が向く」という対応は、基本的にはありません。 型は会社の性質の話で、求人の側から決まるものではないためです。
ただし、はっきり分かれるケースが1つあります。大量に採用する形で、要件が単調な求人です。
「社会人経験3年以上、法人営業の経験あり。年間30名を募集」——このような求人だと、要件の解釈が人によってぶれません。 そうなると、間口を最大化して流通量を上げるほうが、企業にも求職者にも利があります。求人票にきちんと情報が入っていれば、分業型でも十分に価値を出せるということです。
その裏返しが両面型の向く求人になります。難易度が高い、ポジションが限られている、要件の解釈が人によって分かれるもの。
分業型が強い領域には、共通点がある
型の向き不向きは、業界の側にも表れます。分業型が強いのは、業界自体が伸びていて、人が増えるほど売上が上がる構造を持つ領域です。人手が増えることが直接そのまま売上につながるビジネスの形をしている業界では、分業して規模を出すモデルが噛み合います。
会計・税務の求人については、ポジションが限られているものや、要件の読み方が分かれるものが含まれます。 「経験3年以上」と書かれていても、どの業務をどの深さで担ってきたかで解釈が変わる、という形です。
会計特化が効くのは、前提知識のところ
「特化」の中身は何なのか。ドメインの知識と、業務・職種の知識の掛け算です。
ドメインの知識にあたるのは、次のようなものです。
- 事業を進めるうえで、関わる立場の人がどう並んでいるか——どの部署が、どの外部の相手と、どの順で動くか
- その領域の商習慣——どういう進め方が当たり前とされているか
- 地域による差がどのくらいあるか
- 主要な事業者の顔ぶれ
会計・税務の領域だと、関わる官庁や、事務所と顧問先の関係の作り方が、この知識にあたります。
こうしたものを押さえるには、業界や職種で絞らないと難しいというのが、特化が成立する理由です。担当者が幅広く扱っていると、どうしても1つひとつが浅くなります。
なお業界特化と職種特化は、数としてはほぼ同じくらいあります。ただし上のレイヤーになるほど「業界×職種」の掛け算が求められるため、職種だけで横断してきた経験は生かしきれなくなります。とくに経営層に近いポジションになると、業界と職種の掛け算になるケースが多くなります。
つまり「◯◯特化型」を評価するときは、それが若手・ミドル・ハイクラス・経営層のどの層を対象にしているかで見立てが変わります。同じ「会計特化」でも、スタッフ層を扱う会社と管理職以上を扱う会社では、求められる知識の組み合わせが違います。
どちらが向くかは、自分がどこまで絞れているかで反転する
ここが結論です。特化型と汎用型のどちらが良いかという問いは、そのままでは答えが出ません。
- 業界・職種が絞れている場合
特化型のほうが質的に価値が高くなります。汎用型だと、痒いところに手が届かない感覚になりやすいです。
- まだ絞れていない場合
特化型だと情報が一方向からしか入らないため、判断ができません。網羅性への引っかかりが残ります。この段階では汎用型のほうが向きます。
つまり先に決めるのは、エージェントの型ではなく自分の絞れ具合です。そこが決まると、型のほうは自然に決まります。
よくある質問
- 「総合型」と書いてあれば幅広く扱っているということですか
そうとは限りません。「総合型」に業界共通の定義はなく、名乗りとして使われているケースが大半です。実際には特定の業界・層に絞っている会社が総合型を謳っていることがあります。ラベルではなく扱っている求人を見てください。
- 会計に特化したエージェントのほうが良いのですか
自分がどこまで絞れているかで変わります。業界・職種が決まっているなら特化型のほうが質的に高く、まだ決まっていないなら情報が一方向からしか入らないため判断できません。先に決めるのは自分の絞れ具合です。
- 両面型と分業型は、どちらが良いのですか
求人の性質によって変わります。要件の解釈がぶれない求人は分業型が向き、難易度が高い求人や要件の読み方が分かれる求人は両面型が向きます。会社の型だけで決まる話ではありません。
- 特化型かどうかは、どう見分けますか
面談で確かめられます。自分が「持っていてほしい」と思う前提知識を、その担当者が持っているかどうかを見てください。説明を省きたいことを省いて話せるかが、実質的な判断材料になります。
まとめ
- 「総合型」に明確な定義はない。 会社ごとに違い、名乗りとして使われているケースが大半です
- 分類は2つの軸で説明がつく。 ターゲットの方向と範囲、そして企業側と求職者側を同じ担当が見るかどうか
- 両面型と分業型で、面談後の工程が違う。 大きな母集団から自分で選ぶ形か、担当の目線を通したおすすめを判断する形か
- 規模が大きいほど分業型になりやすい。 理由は採用と育成のしやすさです
- 求人ごとにも向き不向きがある。 要件の解釈がぶれない求人は分業型、読み方が分かれる求人は両面型が向きます
- 特化の中身は、ドメインの知識と業務の知識の掛け算。 面談で自分が求める前提知識を持っているかを見れば確かめられます
- どちらが向くかは、自分がどこまで絞れているかで反転する。 先に決めるのは型ではなく、自分の絞れ具合です
複数のエージェントを組み合わせる場合の設計については、「紹介できる求人がない」と言われるのはなぜかの後半で整理しています。
