未経験から会計・税務に入るとき、何が合否を分けるのか

会計・税務の求人を見ていると「未経験可」という表記に行き当たります。ただ、自分がその「未経験」に当てはまるのかどうかが、まず分かりません。

業種は違うが経理はやってきた。経理は未経験だが会計事務所にはいた。簿記はあるが実務はない。組み合わせによって状況が変わりますが、その変わり方が説明されていません。

この記事では、未経験の扱いが何によって決まっているのかと、自分で動かせる範囲がどこまでなのかを整理します。

「未経験」の通りやすさに、順位はつかない

先に結論を書きます。「業種未経験」「業務未経験」「職種未経験」を並べて、通りやすさを順位づけすることはできません。

そもそも、「業務未経験」と「職種未経験」の違いが、実務の側では立ちません。 具体的な進め方を指して業務と呼んでいるのか、職種の経験と何が違うのか——現場でこの2つを区別して使っている感覚がない、という言い方になります。区分としては並んでいても、判断に使われていないということです。

そして次のような求人が、どちらも存在します。

  • その業界の知識があれば、業務や職種の経験は問わないという求人
  • 職種の経験があれば、業界の知識は不要(既存のメンバーが教えられる)という求人

つまり自分の経歴を分類して「自分はこの型だからこのくらい通りやすい」と読むことができません。

必要な経験は、求人企業の状態で逆転する

では何で決まるのか。求人を出している企業が、いまどういう状態にあるかです。

2つの状態を並べると、必要な経験が逆転します。

企業の状態重宝される経験
仕事は取れているが、こなす手が足りていない職種の経験。すぐ回せる人が要る
新しい領域を立ち上げる必要があり、既存の手は余っているその領域の業種経験。立ち上げの当てがある人が要る

同じ求人票の文面でも、背景がどちらかで見られるものが変わります。 そして背景は求人票には書かれません。

ここから、読者が見にいく先が変わります。 自分の経歴を分類するのではなく、募集の背景を見にいくことになります。「なぜいま採るのか」「この人が入ったら何を担うのか」を面談で聞けば、どちらの状態なのかが見えてきます。

合否を分けるのは、経歴ではなく2つ

未経験で通るかどうかの分かれ目は、経歴そのものではありません。2つの要素です。

  1. 職務経歴書の書き方
  2. エージェントから求人企業へのプレゼン

職務経歴書は、経験の羅列ではない

職務経歴書は、自分自身のプレゼンテーション資料です。

棚卸しした本質的な強みと、経験の厚みがどこにあるのか。そしてそれが求人の要件の方向を向いているかまで整理されているかどうかで、結果が変わります。

ここで読み手の実態を想像しておく必要があります。 誰が見るかで、通り方が変わります。

現場の採用責任者やリーダーが見る場合

「この経験は転用できそうだ」と、事実の羅列だけでも判断してもらえる可能性があります。その業務を知っている人が読むためです。
ただし忙しくてそこまで読み込めないときは、キーワードが入っているかをざっと確認して人事に戻す、という形になります。

人事の採用担当が書類選考をしている場合

その方に現場の経験がなければ、事実の羅列から要件との合致を判断するのは困難です。書かれていることが要件のどこに当たるのかを、読み手の側で組み立てられません。

つまり「読めば分かる」形が通るかどうかは、読み手次第です。 そして誰が読むかは選べません。だからこそ、要件の方向を向いた整理が要ります。

エージェントの推薦が、もう半分

エージェントは、履歴書と職務経歴書に推薦書(アピールポイントの資料)を同封することがあります。そこに何が書かれているかが効きます。

ただし前提として、そのエージェントと求人企業の関係の深さがあります。ここが推薦の効き方を決めます。

関係が深いエージェントの場合、推薦書にはこう書けます。 「直接的な経験はないが、この経験とこの経験はとても強く、転用が可能なスキルだと思っています」——経験がないことを認めたうえで、転用できる部分を名指しする形です。

そしてそこで終わりません。書類を送ったあとに電話が入ります。

「以前採用いただいた方と似たマインドセットと、キャッチアップ力の高さを感じられる方です。あの部署の責任者とも相性が良さそうなので、一度会っていただけませんか」

つまり同じ書類でも、どの経路から届くかで扱いが変わります。 これは求職者の側からは見えない部分ですが、エージェントを選ぶ段階では動かせるところです。

求人票に書かれていない条件がある

もう1つ、経歴以外で効いているものがあります。

求人票に書かれていないが合否を左右する条件は、たくさんあります。 どこまで書き込むかは、エージェントと求人企業の判断次第です。

典型は価値の基準や思考の特性です。経験やスキルとは別の種類のもので、数値や資格の形にならないため、求人票にはあまり書かれません。

中長期で活躍してもらうことを考えると、組織の風土との相性、コミュニケーションの取り方、目指す方向への共感の度合いも見られます。書かれていなくても測られている、ということです。

そして法律上、求人票に書いてはいけないと定められている情報もあります(年齢や性別など)。

ただし実際には、現在の組織の構成や体制を踏まえて、企業側が希望を持っているケースはあります。 そうなると「同じ能力・経験の方が2人いて、そこが違う場合はどちらを採用しますか」という問いになったときに、希望に合うほうに傾くのは自然な流れです。

これは求人票からは読み取れません。 そして読み取れたとしても、こちらから変えられるものではありません。

この部分は、求職者側から見えません。 見えないものを推測して対策する意味は薄いので、見える部分(書類と経路)に集中するほうが実際的です。

自分で動かせるのは、2つだけ

完全に未経験という状態からの相談は、対応が千差万別になります。縁とタイミングは、求職者側からコントロールできません。

同じ経歴でも、面談が組まれる経緯によって結果が変わります。 対比すると分かりやすくなります。

経緯起きること
サイトから登録し、入力した情報も最低限。会計事務所を中心に扱うエージェントに、別業種の接客経験だけで登録した面談まで進まない可能性のほうが高い。判断できる材料が渡されていないため
同じ経歴の人が、そのエージェントが支援している事務所の責任者の知人で、「転職を考えているので手伝ってほしい」と伝わった面談は組まれる。 経歴は同じでも、入り口が違います

この差を作っているのは経歴ではありません。 縁とタイミングであり、求職者の側からは動かせない部分です。

だからこそ、動かせるところに集中します。

その中で動かせるのは2つです。

そもそも「要件」の幅は、思っているより広い

分解の前に押さえておきたいことがあります。求人の要件は、ハードな条件からソフトな条件まで、本来かなり幅が広いものです。

何が含まれるか
ハードな条件資格、経験年数、担ってきた業務の範囲。求人票に書かれる部分
ソフトな条件価値観、志向、行動の特性。求人票にはあまり書かれないが測られる部分

「未経験」というのは、このうちハードな条件についての話です。 ソフトな条件の側は、経験の有無とは別に評価されます。

だから完全に未経験でも、ソフトな条件が合っている求職者はいます。 そういう場合、エージェントの側から「どこかのポジションで合う可能性があるので、人事の方だけでも会ってもらえませんか」という提案が出ることがあります。経験ではなく、合いそうな方向から入る形です。

「完全未経験」が何を指しているのかを要素分解する

ハードな条件は満たさないが、ソフトな条件の側は合っていそう——この形まで分けます。そこまで分解できていれば、伝えられる材料になります。「未経験です」だけだと、ハードな条件の話しか伝わりません。

登録時に、情報を書いて送っておく

求人側が未経験可と書いているなら、その案件を扱うエージェントに、こちらの情報を添えて登録します。最低限の項目だけで登録した場合と、経緯や志向まで書いた場合では、面談まで進む確率が変わります。

よくある質問

業種未経験と職種未経験では、どちらが通りやすいですか

順位はつきません。必要な経験は求人企業の状態で逆転します。手が足りていない状態なら職種の経験が、新しい領域を立ち上げる状態ならその領域の業種経験が重宝されます。自分の経歴を分類するより、募集の背景を聞くほうが先です。

未経験で通る人と通らない人の違いは何ですか

経歴そのものではなく、職務経歴書の書き方と、エージェントから企業へのプレゼンの2つです。どちらも自分で手を入れられる部分があります。

職務経歴書は、経験を詳しく書けばいいのですか

羅列では通りません。強みと経験の厚みがどこにあり、それが求人の要件の方向を向いているかまで整理されているかで結果が変わります。読み手が現場の人か人事かで見え方も変わるため、事実だけを並べると合致を判断してもらえません。

完全に未経験でも可能性はありますか

対応が千差万別になるため、あるとも無理とも言えません。要件はハードな条件からソフトな条件まで幅が広く、完全未経験でもソフト条件が合っている場合はあります。動かせるのは、未経験の中身を要素分解することと、登録時に情報を書いて送っておくことの2つです。

まとめ

  • 「未経験」の通りやすさに順位はつかない。 業務と職種の違いが実務では立たず、どちらを問わない求人も両方あります
  • 必要な経験は求人企業の状態で逆転する。 手が足りていないなら職種の経験、新しい領域の立ち上げならその領域の業種経験です
  • だから見にいく先は、自分の経歴ではなく募集の背景。 「なぜいま採るのか」を聞けば、どちらの状態か見えてきます
  • 合否を分けるのは、職務経歴書とエージェントの推薦の2つ。 どちらも経歴そのものではありません
  • 職務経歴書は経験の羅列ではない。 強みが求人の要件の方向を向いているかまで整理されている必要があります
  • 求人票に書かれていない条件がある。 価値の基準や思考の特性、組織との相性は書かれませんが測られます
  • 要件の幅は思っているより広い。 「未経験」はハードな条件の話で、ソフトな条件の側は別に評価されます
  • 縁とタイミングは動かせない。 同じ経歴でも、面談が組まれる経緯によって結果が変わります
  • 動かせるのは2つだけ。 未経験の中身を要素分解すること、登録時に情報を書いて送っておくことです

紹介まで進まない場合の分解については、「紹介できる求人がない」と言われるのはなぜかで整理しています。