「紹介できる求人がない」と言われるのはなぜか
転職エージェントに登録して、しばらくして「現在ご紹介できる求人がありません」という連絡が来る。会計・税務の領域でも起こることです。
この返答は、受け取る側からするとどう解釈していいのか分かりません。求人が本当にないのか、自分が評価されなかったのか、それとも別の理由なのか。 連絡文からは読み取れないようになっています。
この記事では、この状態の中で実際に何が起きているのかを分解し、そのあとに打てる手を整理します。
「紹介できる求人がない」には2つの場合がある
まず、この返答が指している状態は1つではありません。求人が本当に0件の場合と、あっても出さないという判断が働いている場合の両方があります。
そして連絡文はどちらの場合でも同じ形で来ます。 ここが、受け取る側から状態を判別できない理由です。
求人が本当にない場合
こちらは構造の問題です。
エージェントが扱える求人と、求職者の希望条件の重なりが取れていない状態です。会計・税務の領域だと、次のような組み合わせで起こります。
- 特定の資格や経験年数を要件にしている求人が多く、そこに届いていない
- 勤務地の希望が、そのエージェントが強い地域と合っていない
- 希望する職種・業務範囲を扱う求人を、そのエージェントが持っていない
このケースは、そのエージェントとの相性の問題です。別のエージェントなら状況が変わることがあります。
あっても出さない判断の場合
もう一方は、求人はあるが出さないという判断です。こちらのほうが説明されにくい部分です。
エージェント側は、履歴書と職務経歴書からいくつかの点を読み取って判断することがあります。 転職回数、これまでの経験の幅、実務としてどこまで担ってきたか。そうした点から「どこにも紹介できそうにない」と判断されるケースが実際にあります。
もう1つ、選考が決まりやすいかどうかという観点で判断されることもあります。 紹介したうえで選考が通らなければ、エージェント側にも企業側にも工数だけが残ります。その見通しが立たないと、紹介の手前で止まることがあります。
断りの連絡では、理由まで説明されない
ここで多くの人が困るのが、どの条件が効いているのかが分からないという点です。
希望条件のどこが効いているかを分解できれば、次の手が打てます。ところが、「この条件ならこれだけ案件があるので面談できます」という説明が断りの連絡に含まれるケースは、ほとんどありません。 含まれないほうが普通です。
つまり分解は必要なのに、分解の材料が渡されないという状態になります。
そしてこの分解を、求職者の側から動かせるのかどうかは、実務の側からもはっきりしません。 「こう変えればこう変わる」と言える立場にいるのはエージェント側ですが、そこが説明されないまま断りだけが来る。この非対称が、この状況のいちばんやりにくいところです。
そのあとにできること
打てる手は2つあります。どちらも使えます。
- 求人が公開されているプラットフォームで、自分で母数を見る
比較的オープンな求人サイトに登録して、希望条件やキーワードで検索し、どのくらい求人があるのかを自分で確かめます。「この条件を外すと件数が大きく変わる」という感触が掴めれば、どの条件が効いているのかが見えてきます。そのうえで、自分なりの優先順位と突き合わせて判断します。
- エージェントに、聞き方を変えて再度相談する
断りの連絡に理由が書かれていないことと、聞いても答えないことは別です。「条件を緩和することで面談まで進めるとしたら、どの変更が重要でしょうか」という形で尋ねれば、返ってくるケースもあります。
複数のエージェントに登録して面談を受けることも有用です。 扱っている求人が違えば、結果も変わります。
複数のエージェントを使うときの組み合わせ方
「別のエージェントなら結果が変わる」と書きましたが、やり方には設計が要ります。 同じ型のエージェントばかり増やすと、かえって進めにくくなります。
会計・税務の領域でも、エージェントには大きく2つの型があります。求人の流通量が多い型と、特定の企業に深く入り込んでいる型です。
| 型 | 社数の目安 | 期待するもの |
|---|---|---|
| 求人の流通量が多い型 | 1社 | 母数。どういう求人が世の中に出ているかを掴む |
| 特定企業への入り込みが深い型 | 2〜3社 | 個別の企業に対する深さ。選考の進め方まで含めた伴走 |
流通量の多い型を複数持つ意味は薄いところです。同じような求人が別の窓口から出てくるだけで、母数はそれほど増えません。
いちばん避けたいのは、手広い型を多数登録すること
これが実務で最もよく見る崩れ方です。手広く紹介する型のエージェントをいくつも登録すると、有象無象に求人が紹介されてきます。 そして次のことが分からなくなります。
- どこに応募したのか
- どこが選考中で、どこが終わったのか
- 選考が終わったのは、見送りだったのか自分が辞退したのか
同じ企業に、別のエージェント経由で二重に応募してしまうこともあります。 これは企業側から見ると管理の混乱として現れるため、避けたい状況です。
紹介の窓口を増やすことと、選択肢が増えることは同じではありません。 管理できる範囲を超えた時点で、増えたのは選択肢ではなく作業量です。
入り込みが深い型には、つながりの深さを聞ける
複数使っているときに、ここが効いてきます。
特定の企業に深く入り込んでいる型のエージェントは、企業ごとの付き合いの深さがはっきりしています。 そして、それを教えてくれる場合があります。
- 「この企業とは長く取引があり、実績も多くあります」
- 「この企業の求人は持っていますが、付き合いはそれほど深くありません」
後者の返答が返ってきたなら、そのエージェント経由で応募するより、その企業とのつながりが深い別のエージェントから応募したほうが、進め方として有利になることがあります。
志望が定まっている場合の考え方
志望する方向が定まっている場合は、手広く網を張る形にはなりません。
会計・税務の領域だと、たとえば「税理士法人で法人税の実務を深めたい」「事業会社の経理で連結決算に関わりたい」といった形で方向が決まっているケースです。この場合は、1件1件の希望に対して専門家に伴走してもらうという感覚に近くなります。
このとき、エージェントの数が多いこと自体は問題になりません。問題になるのは、方向が定まっていない状態で数を増やすことです。定まっていないまま数を増やすと、出てくる求人の幅が広がるだけで、判断の軸が育ちません。
筋が悪い動き方
一方で、この状況で避けたい動き方が2つあります。
1つは、条件を全部下げてとりあえず応募することです。 どの条件が効いていたのかを確かめないまま全部を緩めると、次に何が起きても解釈できなくなります。通ったとしても、自分が何を諦めた結果なのかが分からない状態で入社することになります。
もう1つは、大量に紹介されたものを片っ端から応募することです。 紹介の件数が多いエージェントだと、30件、50件、100件という数が出てくることがあります。そこに「どうなるか分からないから、やっておかないと」と全部応募すると、後で管理ができなくなります。
よくある質問
- 「紹介できる求人がない」と言われたら、実力不足ということですか
そう判断されているケースもありますが、求人と希望条件の重なりが取れていないだけのケースもあります。連絡文はどちらの場合でも同じ形で来るため、受け取る側からは判別できません。まず2つの場合があると分けて考えるところから始まります。
- 断られた理由を聞いてもいいのですか
聞き方によって返ってくることがあります。「条件を緩和することで面談まで進めるとしたら、どの変更が重要でしょうか」という形で尋ねると、答えてもらえるケースがあります。断りの連絡に理由が書かれていないことと、聞いても答えないことは別です。
- 条件を下げれば紹介してもらえますか
紹介につながることはありますが、どの条件が効いていたのかを確かめないまま全部を下げるのは避けたほうがよいです。何を諦めた結果として決まったのかが分からなくなります。まず求人サイトで母数を見て、効いている条件を絞り込むほうが順序として先です。
- 複数のエージェントに登録してもいいのですか
有用です。扱っている求人が違えば結果も変わります。ただし手広く紹介する型のエージェントを多数登録すると、応募状況の管理ができなくなります。目安は流通量の多い型を1社、入り込みが深い型を2〜3社です。
- 同じ求人が複数のエージェントから紹介されたらどうすればいいですか
その企業とのつながりが深いエージェントを選ぶという判断ができます。入り込みが深い型のエージェントは、企業ごとの付き合いの深さを教えてくれる場合があります。二重に応募することは避けてください。
まとめ
- 「紹介できる求人がない」には2つの場合がある。 本当に0件の場合と、あっても出さない判断が働いている場合。連絡文はどちらも同じ形で来ます
- 0件の場合は、扱っている求人と希望条件の重なりの問題。 そのエージェントとの相性であって、別のエージェントなら変わることがあります
- 出さない判断は、書類から読み取られたものにもとづく。 転職回数や経験の幅、選考が決まりやすいかという見通しから、紹介の手前で止まることがあります
- 断りの連絡に理由は書かれない。 分解は必要なのに、分解の材料は渡されないという状態になります
- 打てる手は2つ。 求人サイトで自分で母数を見ること、そして聞き方を変えてエージェントに再度相談することです
- 複数使うなら、型を分ける。 流通量の多い型を1社、入り込みが深い型を2〜3社。同じ型ばかり増やしても母数は増えません
- 手広い型を多数登録するのがいちばん崩れる。 どこに応募してどうなったかが分からなくなり、二重応募も起こります
- 入り込みが深い型には、企業とのつながりの深さを聞ける。 これは複数使っている状態でなければできない判断です
- 避けたいのは、条件を全部下げることと、大量に応募すること。 どちらも焦って動きを加速させた形で、判断の材料が増えないまま選択肢が減ります
断られた状態は、何が起きているかを分けて考えられるかどうかで、次の手が変わります。 状態を1つのものとして受け取ると、動きを速める以外の選択肢が見えにくくなります。
面談まで進んだ場合に、そこで何を話し何を聞けるかについては転職エージェントとの面談では何を話し、何を聞けるかで整理しています。
